仕事から帰ると、部屋の中は朝と同じ静けさでした。
靴を脱いで、ネクタイをゆるめる。
冷蔵庫から冷たいお茶を取り出し、一口飲む。
それだけで、「今日も終わったな」と肩の力が抜けます。
ソファに腰を下ろして、しばらく何も考えずに天井を見上げる。
そんな時間が、以前より少し長くなった気がします。
若い頃は、仕事が終われば「明日はもっと頑張ろう」と思っていました。
新しい仕事を覚えることも、評価されることも、どこか楽しさがありました。
でも50代になった今は、その気持ちとは少し違います。
仕事が嫌いになったわけではありません。
ただ、「また明日も仕事か」と思う日が増えました。
昔のように、仕事だけを人生の中心に置けなくなったのかもしれません。
体力のこともあります。
将来のこともあります。
仕事以外に大切にしたい時間もあります。
そうしたものが少しずつ増えてきて、仕事との向き合い方が変わってきたのでしょう。
それなのに、心のどこかでは昔の自分と比べてしまいます。
「あの頃はもっと頑張れていたのに」
「最近の自分は、少し弱くなったのかな」
そんなふうに思う時もあります。
でも、本当にそうなのでしょうか。
頑張れなくなったのではなく、頑張ることだけでは大切なものを守れないと気づき始めた。
そう考えることもできるのかもしれません。
帰宅した部屋で静かに過ごす時間。
温かい食事をとること。
好きな音楽を流しながら、ゆっくり過ごす夜。
以前なら気にも留めなかった、そんな時間が少しだけ愛おしく感じられるようになりました。
失ったものばかりではなく、手に入れたものもある。
そう思える日もあります。
もちろん、明日の朝になれば、また仕事へ向かう足取りが重く感じるかもしれません。
それでも、今日一日を終えた自分を、「よく頑張った」と大げさに褒める必要はありません。
「今日も一日を過ごした。」
それだけで十分な日もあります。
50代になると、以前とは違う大切なものに気づくことがあります。
答えはまだ見つからなくてもいい。
無理に前向きにならなくてもいい。
少しずつ、今の自分に合った歩き方を探していけばいいのだと思います。
明日もきっと、同じような一日が始まります。
でも、今日よりほんの少しだけ、自分に優しくなれたなら。
それだけでも、十分なのかもしれません。
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