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🚴‍♂️多摩川大橋での心の小休止|風の中で見つけた静かな午後

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クロスバイク日帰り旅

はじまり

芝生の向こうに広がる多摩川大橋。長い旅の終わりに見えた穏やかな午後の光。
ここまで走ってきた風が、ようやく静まった。 橋の向こうに、まだ見ぬ明日がかすかに揺れている。

鎌倉から長い道のりを走り抜け、多摩川の風に包まれた午後。
走ることと、立ち止まること。そのどちらにも意味がある。
クロスバイクが教えてくれた、静かな時間の記録です。

🗺 サイクリング概要

  • 出発地:神奈川県鎌倉市
  • 目的地:多摩川大橋
  • 片道距離:約35km
  • 獲得標高:157m
  • 所要時間:約2時間40分(コンビニ立ちより含む)
  • 天気:晴れ/曇り

──橋の上で、風が変わった

鎌倉からの長い道のりを走り終え、気づけば街のビルが視界に入りはじめていた。
潮の香りが薄れ、代わりにアスファルトの熱気と車の音が耳に届く。
ペダルを踏む足が、ゆっくりと重くなる。
「そろそろ、止まってもいいかな」
そんな言葉が、心の中でふっと浮かんだ。

多摩川大橋の上で、自転車を止めた。
遠くに飛行機が見える。川面には風が走り、空の青が揺れていた。
鎌倉の海を出てから、ここまでの時間が一気に蘇る。
踏み続けたペダルのリズム、交差点の青信号、流れていった無数の風景。
そのすべてが、自分の中を通り抜けていった気がした。


川の上の静けさ

夕方の光を映す多摩川の水面。雲と空が溶け合うように流れていく。
川面に映るのは、空か、それとも自分の心か。 風が止まり、時間がゆっくりと息をする。

スタンドを立てて、ハンドルから手を離す。
すると、不思議なほど静かだった。
車の音も、話し声も遠く。
ただ、風と水の音だけが近くにある。

橋の欄干にもたれかかりながら、川を見下ろした。
水面の揺れが、まるで時間そのもののようにゆっくり流れていく。
ふと、対岸の方に目をやると、一人の少年が自転車を押して歩いていた。
青いヘルメットが小さく揺れながら、橋の真ん中で止まる。
そして空を見上げるように立ち止まった。

その姿を見て、なんとなく昔の自分を思い出した。
初めて遠くまで走った日のこと。
息が切れるほど必死に漕いで、でも心だけは妙に軽かった。
「行けるところまで行こう」
あの時も、そんな気持ちで走っていた気がする。

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走ることと、立ち止まること

いつからだろう。
“走り続けること”ばかりを正しいと思っていた。
頑張らなきゃ、進まなきゃ、置いていかれる──
そんな焦りが、いつの間にか日常になっていた。

でも、こうして橋の上で風に吹かれていると、
止まることにも意味がある気がしてくる。
むしろ、立ち止まらないと見えない景色がある。

川面に映る雲を見ながら、ふとそんなことを考えた。
風が頬をなでる。少し冷たくて、気持ちがいい。
少年の姿はもう見えなかった。
だけど、その残像だけが、やけに鮮明に残っていた。


小さな午後の会話

鉄橋の下に広がる緑のフィールド。都会の午後に残る静かな余白。
誰かの日常のすぐそばで、ぼくの旅は続いている。 遠くで響くボールの音が、なぜかやさしく聞こえた。

ベンチに腰を下ろして、水筒の冷たい水をひと口飲む。
自転車のチェーンが陽に光っていた。
「今日は、よく走ったな」
声に出すと、少しだけ胸の奥が軽くなった。

スマホを取り出して地図を見る。
多摩川はまだ北へと続いている。
羽村堰、昭和記念公園、その先には奥多摩の山々。
けれど、今日は行かない。
今はただ、ここで風を感じていたかった。

隣のベンチには、見知らぬサイクリストが座っていた。
黒いロードバイク、同じように汗をぬぐいながら空を見ている。
言葉は交わさなかったけれど、
お互いになんとなく「おつかれさま」と心の中で呟いたような気がした。


終わりではなく、途中

川沿いの道を、歩くようにペダルを踏む。
スピードは出さない。
空の色が少しずつ橙に変わり、橋の影が長く伸びていく。

「またここから走り出せばいい」
そんな声がどこからともなく聞こえた。
多分、それは自分の中の声だったのだろう。

走ることは、目的じゃない。
自分を見つめ直すための時間。
どこへ行くかよりも、どう感じるかが大事なんだ。

夕暮れの光が、自転車のフレームを金色に染めていた。
もう一度ハンドルを握り、前を向く。
川面の風が背中を押した。


そして、静かな再出発

「焦らなくていい」
「今日の風が、ちゃんと明日に繋がっていく」

そう思えた瞬間、なぜだか笑みがこぼれた。
たった15kmの旅。でも、心の中ではずっと長い距離を走ったような気がする。

空はもう薄紅に染まり、街の灯がひとつ、またひとつ灯りはじめていた。
多摩川大橋の上を、もう一度ゆっくり渡る。
どこかで見た少年の背中を思い浮かべながら。

「また走ろう。いつか、あの先まで。」
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まとめ──立ち止まることも、旅の一部

「多摩川大橋」の銘板の前に停めたクロスバイク。風をまといながら、しばしの休息。
走ることも、止まることも、どちらも生きること。 今日の風が、また明日を押してくれる。

走ることだけが前進ではない。
立ち止まって、風を感じる時間もまた旅の一部だ。
多摩川の橋の上で、そんな当たり前のことを思い出した。

足を止めると、耳に入ってくる音が増える。
遠くの笑い声、川面をなでる風のささやき、鳥が羽ばたく音。
走っているときには通り過ぎてしまうものが、
こんなにも多かったのかと、少し驚いた。

しばらく空を見上げていると、
焦りや不安が、どこかへ溶けていくようだった。
時間に追われていた自分も、ここではただの旅人だ。
「また走り出せばいい」
そう思えた瞬間、少しだけ胸が軽くなった。

旅は目的地に着くことではなく、
その途中で心がどう動いたかで決まるのかもしれない。
風が頬をなでた。
今日という日が、確かにここにあった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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